じゃじゃ麺、ジャージャー麺、炸醤麺

じゃじゃ麺、ジャージャー麺、炸醤麺

2005/04/03更新

私のふるさと盛岡には沢山のおいしい食べ物がある。炸醤麺(違うものという認識で、じゃじゃ麺と書かれることが多い)も、盛岡三大麺とか盛岡四大麺とかいうものの一つとして、最近新聞雑誌等の大手メディアでもしばしば取り上げられる。一般に、大手メディア情報は、ネット上の情報などより信憑性が高いと思われているが、炸醤麺の話に限って(?)は、首を捻るような話もみうけられる。

新聞社、出版社系ホームページ上にある炸醤麺の情報を検証してみよう。これらもインターネット上の情報の一つではあるが、既に書籍化されたコラムもあり、大手メディア情報の代表として紹介させていただく(以下、赤字がコラム、記事からの引用文)。


Yomiuri On-Line 2004年2月26日 泉麻人のなぞ食探偵 泉麻人氏(コラムニスト)

ジャージャーメンを和風に

盛岡じゃじゃめんはウドンを使う。

じゃじゃめんは、戦時中、中国東北部に行った初代店主が向こうで覚えたジャージャーメンを和風にアレンジしたのが発端。

たぶん泉氏は、盛岡人から聞いた話をそのまま書いただけなのだろう。特に本人の考察は無い。泉氏は、『3度のメシより!?レバニラ炒め』という「日本人が日本人のために作り上げた「ニッポン中華」」を語る本の巻頭対談で、「酢豚にパイナップルは日本オリジナル?」という問いかけに対しても、「でしょう」とただ一言。彼は、食べ物の起源とか沿革とかいった細かいことには、あまり関心がないようだ。


dancyu Online 2004年5月号 小山薫堂の「一食入魂」 小山薫堂氏(放送作家)

要はジャージャー麺の進化版である。まず麺が違う。ジャージャー麺は中華麺だが、じゃじゃ麺は平たいうどん。茹でたてのうどんの上に、黒胡麻を使った特製肉味噌、それにキュウリと刻みネギが乗っている。つまり見た目は、ほぼジャージャー麺に近い。しかし、その食べ方が一風変わっているのだ。

小山氏は北京にも行ったことがあるようだが、おそらく地元コーディネーターの案内で、中国の一般人民や観光旅行者はめったに食べられないようなご馳走を堪能してきたのであろう。北京には茹でたての平たいうどんを使った炸醤麺という、日本人から見れば一風変わった食べ方をする、北京を代表する庶民的な料理があるのだが・・。

ところで、「じゃじゃ麺はジャージャー麺である」で紹介した日本経済新聞の記事は、2004年5月29日の夕刊に載ったものだが、日経の記者は、取材前に泉氏や小山氏のコラムを読んで参考にしたのかも知れないなぁ。良く似ている。そりゃ、泉氏や小山氏の書いてるほうが正しいと思うよね。


NIKKEI NET 2004年10月14日 食べ物新日本奇行 「縁日系」(その4)野瀬泰申氏(日本経済新聞文化部編集委員)

少なくともハルビン周辺では、うどんを使ったものが伝統的な炸醤麺ということになる。

盛岡のじゃじゃ麺は炸醤麺の姿をよく伝えている。中国味噌や豚の細切り肉は日本の味噌、ひき肉などで代用されているが、安直にラーメンの麺で済まさなかったところがエライ。さらに、本場にもない「チータンタン」という卵と麺のゆで汁などを活用した締めのスープを考案したところもエライ。

この店は「媽媽」のようだ。東京の一軒の中華料理店でうどんを使った炸醤麺を見たからって、ここまで断言して良いのかという気もするが、「ハルビン周辺では、うどんを使ったものが伝統的な炸醤麺」には賛成である(厳密には、中国人と盛岡人は、うどんと炸醤麺用の白く平たい麺を区別するが)。野瀬氏は中国味噌をどういう意味で使われたかわからないが、私のサイトへの報告によれば、媽媽の炸醤は甜麺醤を主体としているそうだ。北京や中国東北部では、主として黄醤を使う。黄醤は大豆を原料にする醤であり、小麦で作る甜麺醤や、そら豆で作る豆板醤とは別物である。味は日本の八丁味噌や仙台味噌に似てしょっぱく、黄醤が手に入らなければ、これらの味噌を使ったほうが本場の味に近いものが作れるはずだ。また、豚の細切り肉は中国では肉絲というが、単に媽媽では肉絲を選んだということにすぎない。炸醤には、肉丁(角切り肉)や肉末(みじん切り肉)、絞肉(ひき肉)も使う。白龍は野瀬氏の想像を遥かに上回るほどエライのである。

中国には鶏蛋湯(チータンタン)という非常にポピュラーなスープがある。また、老北京人は炸醤麺を食べた後、麺のゆで汁を飲んで最後の締めとする。ゆで汁に卵を混ぜて鶏蛋湯にする方法が中国に存在するという証拠はないが、媽媽一軒の話を元に、そのような作り方の「チータンタン」が本場に無いなどとは、私は軽はずみに言えない。

ともあれ、「安直にラーメンの麺で済まさなかったところがエライ」と指摘してくれたのは、白い麺を応援する私のサイトにとっても追い風になろう。


asahi.com 2004年12月13日 まずい麺 穴吹史士氏(元「AERA」副編集長、「週間朝日」編集長、朝日新聞出版局次長、現インターネット・キャスター)

「じゃーじゃー麺じゃないですよ。じゃじゃ麺です」と、地元の記者にその存在を聞いたばかりのところに、

うどんのように太い麺をゆであげた上に、特製の味噌を盛ってあり、おろし生姜少々と紅生姜一切れ。好みによって、辣油、酢、おろしニンニクを加え、ぐじゃぐじゃにかき回して食す。

じゃじゃ麺とじゃーじゃー麺は違うものだと、自らの意見ではなく地元記者の言葉として紹介している。さすがに老獪である。


大手メディアであれネット上の素人の情報であれ、信頼できる情報もあればいい加減な情報もある。幸い素人のホームページは、新らしい事実に則して間違いを正すことが容易である。そのためにも皆様のご協力が必要。炸醤麺に関する情報をお持ちのかたは、是非炸醤麺と水餃子大好き荒川のブログ にお知らせください。


geminizz@hamakko.or.jp

荒川文治(あらかわ ふみはる)
神奈川県横浜市

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