どっこいマジソンの坦々麺は汁あり

どっこいマジソンの坦々麺は汁あり

2002/10/10登録

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今回紹介するレストランはマジソンでも坦々麺と炸醤麺をともに出す、「華記麺家・Wah kee Noodle restaurant」です(写真1)。香港系移民が老板の店です。

 さて、このレストランは名前の通り、麺料理を中心としたマジソンで最も麺料理の充実した店です。メニューを見てみますと、えらい種類の麺料理があります。とはいってもここはやはりアメリカ。中国本土のように麺中心の店だからといって、その店自身で麺を打つことなどはありません。香港系の店なので、まずサーブされる基本は雲呑麺などに使われる黄色い「(鶏)蛋麺」、次いで白い「撈面*」です。

 ここ最近で二度行きました。一度はケンタッキーの友人が私の街に遊びに来てくれたので、その友人と一緒に行きました。私は坦々麺(写真2)、友人は雲呑麺(写真3)を食べました。坦々麺はなんとスープ入りです。スープは雲呑麺などに使われるものがベースになっており、それに辣椒と花椒が混ぜてあり、辛みと風味を付けております。上に乗っているのは豚の挽肉と蝦、グリンピースとニンジンを薄目の味付けで炒めたものです。麺は撈面です。撈面はもともと柔らかい麺ですから、スープに入れるとブヨブヨになってしまいます。まあ、アメリカというところは柔らかい麺が好まれる傾向にあるので(スパゲッティなども概して柔らかい)、それでもいいのでしょうが、麺のコシが大好きな日本人には歯ごたえがなかったり、喉越しが悪かったりで、食べた気がしません。それでも水気でふくれた麺なので、知らない間にお腹だけはいっぱいになります。雲呑麺は、といいますと黄色い麺です。香港じゃ硬ければ硬いほど良いといわれる黄色い麺ですから、ブヨブヨになったりはしていないようですが、友人はスープが化学調味料の味が強いといっています。確かに坦々麺も辛さでごまかされていたけど、時間が経つと辛さはひいてきて、化学調味料独特の舌の軽い痺れみたいのを感じました。まあ、それでも日本の下手な中華料理屋よりは使っている量はかなり少ないと思います。アメリカでは概して、安い中華料理店でも化学調味料の使用量はかなり抑えられていると思われます**。

 この時はそれ以外に油条と酢豚(写真4)を頼みました。酢豚はいつも使っている肉がないからリブを使って料理してもいいかって聞かれました。リブはもちろん美味しい肉ですから、それでも構わないと了解しました。しかし下ごしらえをせずに肉を揚げた模様で、肉に味が付いていないし、えらく硬かったです。また、使っている酢の質があまりよくなく、甘さも強かったです。これは友人のリクエストなので注文しましたが、私は酢豚があまり好きではありません。というか、日本の酢豚は酢の味が悪く、アメリカのは甘さが際だっているので好きではないのです。ちゃんとしたものをちゃんと料理すれば、酢豚だって美味しく食べられます。日本で唯一美味しいと思った酢豚が、「上海小吃(新宿・歌舞伎町)」のものです。ここは中国酢を使った、リブのおいしい酢豚を出すので、みなさん一度試してみてください。  二度目は一人で行ってきまして、炸醤麺(写真5)を食しました。麺はやはり他のマジソンの店と同様、撈麺です。具は、醤とともに豚の挽肉、蝦、ニンジン、グリンピースが炸されており、坦々麺のそれとほとんど同じようですが、こちらには細かく刻んだセロリも入っています。蝦が入っている炸醤麺はちょっと不思議ですね。こちらはスープに浸かっていない分だけ、麺はある程度の硬さを保っており、美味しくいただけます。中華料理の店は、大概丸い皿に麺を盛ってくるのですが、ここは楕円形の皿。なんとなくスパゲッティ的感覚です。  それにしてもレストランの名前の付けかたってのはなかなかおもしろいですね。すべてとは限りませんが、名前だけで店の由来とか系統がわかることがあります。この・・kee(記)というレストラン名の付け方は、香港系の移民の特徴でしょう。新しくできた店でそういう名前は少ないので、ちょっと昔の流行りだったのでしょうか。サンフランシスコでもそういう名前を見かけましたし、東南アジアなどでも多いですよね。翻って日本では「来来軒」とか「萬来軒」とかあれば、間違いなく日本的中華料理の店だなって思いますからねぇ・・・(笑)。

* 撈麺:香港や中国南方を中心に食される、白く丸い断面の麺。乾麺の状態のものを軽く茹でたり、蒸したりして、その上に具や調味料を載っけて、かき混ぜて食べる。一方アメリカではこの撈麺が中華の麺料理として最も大きな位置を占める。というか、他のものがほとんどないのである。撈麺の麺自体はsoft noodleとかstew noodleなどと呼ばれる。しかしチープな中華料理店では、撈麺といえば焼きそばのように炒めて食すのが一般的なので、この焼きそばが撈麺と呼ばれるようになってしまった(麺の種類を指す言葉と言うことでなく、料理の名前として間違えて捉えられてしまっているということ)。もちろん高級な店では香港式のちゃんとした撈麺を出す。

**化学調味料:グルタミン酸ソーダ(味の素の化学成分名)。神経科学伝達物質であり、舌の神経細胞を刺激することで「旨味」を伝える。その昔、味の素をたくさん取れば頭がよくなるなどといわれたのは、グルタミン酸ソーダが末梢のみならず中枢神経でも重要な働きをすることが明らかにされたからである。しかし外からいくらたくさん摂っても、神経細胞から分泌されたものでなければ正常な機能を示さず、決して決して頭がよくなるわけではない。数十年前、安価においしさを提供しようとした中華料理店で味の素を大量に使った結果、そういった店から、頭痛や吐き気をもよおしたりする人がたくさん現れた。これを「チャイニーズレストラン・シンドローム」という。特に西欧人は、グルタミン酸ソーダに強い感受性を示す人が多いので、このシンドロームになりやすい人が多い。それゆえにアメリカの中華料理店はそこら辺に気を遣っているようなのである。
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geminizz@hamakko.or.jp

荒川文治(あらかわ ふみはる)
神奈川県横浜市

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